遺言書の効力その六

夫婦相互遺言+1にしましょう!

夫婦相互遺言とは、お互いが「私が先に死んだら、全てあなたに相続させます」という内容を含んだ遺言のことです。特に、子供のいない夫婦ではたいへんありがたい遺言となります。何故なら、子供がいない夫婦で、夫が先に死亡した場合、原則として妻と、夫の兄弟姉妹が法定相続人となるからです。夫名義の不動産を妻名義にするには、夫の兄弟(場合によっては甥や姪)の印鑑が必要となります。兄弟には4分の1の法定相続分があるので、請求されれば支払をしなければならなくなります。夫婦二人で築いた財産を何故、蓄財に関係のない兄弟に分け与えなければならないのかと文句を後から言ってもどうすることもできません。このような悲惨なことにならないように、遺言を書いてもらっておくと、兄弟等の印鑑は必要なく、兄弟等には遺留分もないので、全て妻が相続できることになります。妻が先に死亡した場合も同様です。妻名義の預貯金を引き出すのに、同様の遺言があれば妻の兄弟の印鑑は必要ありません。よって、兄弟等に遺産の一部を分け与える義務もありません。

この夫婦相互遺言の注意点として、夫婦が共に死亡した場合の財産の行く先を決めておくということです。ただ単に、「全てあなたに」という内容の遺言があれば、一方が死んだ際は有効です。でもその後、他方が死んだ場合は、もう既に夫婦の一方が死んでいる訳ですから、死者に相続させることはできません。その結果として、後から死んだ夫婦のどちらかの兄弟や甥姪が相続人となり、遺産を分配(山分け)することになります。自分たち二人が死んだ後は、どうにでもしてくれということであれば、それはそれで構いません。ただ、夫婦で築いた財産を特定の人に引き継いでもらいたいのであれば、その内容を予備的遺言として、それぞれの遺言の中に書いておく必要があります。例えば、特定の兄弟姉妹の一人、甥姪の一人に、二人の老後の世話を頼むと共に葬式や供養もお願いしておくのを前提に、財産を相続させる(遺贈する)ことができます。当然、遺言作成前に頼みたい人の了解を取っておく必要があります。

一先ず、夫婦相互遺言を作成しておいて、一方が死んだ後に再度作成すれば良かろうという考え方もあります。しかし現実に最愛の伴侶が死んだ後、遺言を書き直そうという気が起きるものでしょうか。そして、その時既に残された伴侶が認知症であったりすると書き直し自体ができません。このようなことにならないように、夫婦二人が元気なうちに、二人が共に死んだ場合のことも相談しておいた方が安心です。但し、夫婦二人が同じ用紙に遺言を書く、共同遺言は禁止です。無効な遺言となってしまいます。

夫分の遺言見本 妻分の遺言見本